愚痴・憎まれ口・無駄口・世迷言・独断と偏見・屁理屈・その他言いたい放題!
その12.≪21世紀の伝統芸能ルネッサンス!≫
2001年1月1日の早朝、TVで中村勘九郎丈とご子息達による、
「連獅子」を拝見しました。そう言えば、5年前の元日にも、TVで
勘九郎丈親子の「連獅子」を拝見した記憶があります。前年の12月
の発表会で、僕も親子で「連獅子」を踊っていたので、よく覚えてい
るんです。子供って5年も経つと、こんなにも大きく成長するものな
んだなァと、感慨にふけりながら拝見していましたが、その内に段々
観ているのが辛くなり始めました。 。
他にもご覧になった方々が、邦楽関係のHPの「掲示板」に、色々と
感想を書いておられました。「踊り手はともかく、地方さんが寒そう
で可哀想だった。」「『連獅子』を、海を背景にして踊るのは可笑し
い」「係員の動きが目障りだった」等のご意見が書かれていて、僕も
確かに同じようには感じましたけど、僕はもっと違う事で、心の中が
寒々としたんです。 。
確かに、寒そうでした。何と言っても元旦の夜明け前ですから、僕が
住んでる九州でさえ寒いのに、関東の海岸の吹きっ晒しの場所で、寒
くない訳がありません。踊るのだって辛かったと思いますが、あの最
悪の状態で最後まで立派に演奏された地方さん達には、心から敬意を
表したいと思います。また長時間に渡って会場設営や整理をされた皆
さんも、暗いうちから集まられて、ビニールの合羽を着てご覧になっ
ていたお客様達も、本当にお疲れ様でした。ご苦労様でした。 。
しかし、しかしです。僕達はプロなんですから、もしも絶対に上演し
なければならないと言われれば、どんなに大変でも上演する事に大き
な意義と価値があるのならば、たとえ極寒の地であろうが灼熱の赤道
直下であろうが、命がけで踊り演奏する事も厭いませんし、やり遂げ
た後の喜びも感動もひとしおだろうと思います。そんな時は多分、も
う欲も得もないと思います。この仕事をやっていてよかったという充
実感で、見も心も満たされていると思うんです。 。
でも先日の「連獅子」の場合、見終わった後の率直な感想は、「お疲
れ様!」という言葉しか出て来ませんでした。踊り手も演奏者も観客
もスタッフも、只々大変なだけで、まるで我慢大会が終った後のよう
な気分でした。最後に挨拶する勘九郎丈の顔は、お客様への感謝と言
うより労わりの表情に見えましたし、お客様方も感動したと言うより
は、「やれやれ、ドッコイショ!」という感じで、席を立たれている
ように見えました。こんな風に感じたのは、僕だけでしょうか? 。
なぜあの時に、あの場所で、ああいう形で「連獅子」を上演しなけれ
ばならなかったのか!僕にはどうしてもピンと来ないんです。前にも
書いたように、アフリカやアラスカの原住民の人達に、どうしても日
本の伝統文化を知って欲しいというような理由や、そうしなければ国
の体面が保てない(?)というような切羽詰った状況の中でなら、ど
んなに過酷な条件の中であっても上演する意義は充分にあると思いま
すけど、今回のは単なる思い付きのパフォーマンスに過ぎないような
気がしました。どんな効果を期待して上演に踏み切ったのかは、知る
由もありませんけど、果たして期待しただけの効果があったのでしょ
うか? 。
話は変りますが、先日僕の「掲示板」に、邦楽関係者の方からの書き
込みがあり、TVのお正月番組の中の伝統芸能関係の番組が、昔に比
べて少なくなったと嘆いておられました。僕も本当にその通りだと思
いますが、その方が「こんなに多くの愛好者がいるのに・・・」と書
かれていた事に対しては、異議を唱えざるを得ませんでした。 。
TVの番組はたとえNHKであろうとも、視聴率を無視しては成り立
ちません。邦楽や日舞の愛好者が激減しているからこそ、伝統芸能関
係の番組も減っているのだと言う現実を、我々関係者はどんなに辛く
とも、正面からシッカリと受け止めなければならないと思います。勿
論「教育TV」のように、視聴率とはあまり関係なく番組を編成して
いる局もありますが、それでもなお伝統芸能関係の番組が減っている
のは、結局は番組を編成している放送関係者の意識の中からも、既に
「伝統芸能」が消えかかっている証拠だと思います。 。
もう、この流れは誰にも止めようがありません。たとえ文部省が、遅
蒔きながら伝統楽器の演奏を音楽の時間の必須科目にしたとしても、
もう手遅れかもしれません。何処かにも書きましたが、つい十年前ま
では、母親が娘に着物を着せてやれなくても、祖母が孫娘に着せてや
れたのですが、今では世代が変った為に、孫に着物を着せられる祖母
が殆んどいなくなりました。また伝統芸能関係者の多くは、「いくら
若い人達でも、『黒田節』や『さくらさくら』位は知っているだろう
し、唄えるだろう。」と安心していますけど、実際に若い人達に唄わ
せてご覧なさい!殆んどの若者が唄えませんから!それどころか「桃
太郎」「金太郎」「お猿の駕篭屋」「通りゃんせ」などの童謡さえ、
チャンと唄える若者は少ないのが現実なんです。 。
こんな危機的な状況の中で新世紀を向かえた我々伝統芸能関係者が、
本気でルネッサンスを考えるのなら、場当たり的な思い付きのパフォ
ーマンスではなく、10年単位での遠大な計画の下に、まず今は何を
やるべきなのか、そしてそれがある程度の好結果を生んだ時には、次
には何をやるべきなのか、残念ながら充分な成果が得られなかった時
には、緊急手段としてどんな手を打つべきなのか・・・皆で額を寄せ
合って唾を飛ばして話し合う時が来ていると思います。ジャンルが違
うとか流儀か違うとか格式が違うとか、モウそんな事にこだわってい
られるような、余裕のある時代じゃないんです。 。
僕は今まで、なにか新しい意欲的な事をやる場合に、「新しい試みに
失敗は付き物。失敗を恐れていては何も出来ない。」という気持ちで
やって来ましたけど、これからはもっと確実に次の段階に繋げていけ
るような試みに、慎重かつ果敢に挑戦すべきなんだと、自分に言い聞
かせています。「失敗は絶対に許されない」と言ってもいい位の現状
なんですから!プレッシャーは益々重く圧し掛かってきますけど、も
う1歩も後へは引けません!でも、1人でやれることには自ずから限
界があります。このネットの輪が本当に力を発揮すれば、想像を遥に
超える成果が得られるような予感がしてなりません。心有る方々、一
緒に力を合わせて頑張ってみませんか?! 。
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